私たち、平和を目指す朗読集団「国境なき朗読者たち」は、京都の大学生と市民の有志から成る劇団です。2008年12月27日から翌2009年1月17日まで22日間にわたり続いたイスラエルによるガザ攻撃という事態を受けて作られた朗読劇「The Message from Gaza ガザ 希望のメッセージ」を上演するために、朗読劇をプロデュースしている「つばめクラブ」のプロデューサー安藤栄里子と、朗読劇の脚本・演出担当の岡真理によって2009年に結成されました。以来、メンバーの変遷を経ながら、京都を中心に上演を重ね、2013年12月には初の東京公演を行いました。
劇団の正式名称は「平和を目指す朗読集団「国境なき朗読者たち」」ですが、つばめクラブのプロデュースのため、愛称は「つばめ劇団」、役者やスタッフは「つばめ」と称されています。「つばめ」という名は、オスカー・ワイルドの『幸福な王子』で、街に生きる人々の苦しみや悲しみ、痛みを王子に告げ報せるあのつばめに由来します(あるいは、イディッシュの歌「ドナドナ」で、屠殺場に引かれていく仔牛の姿を空から見守るつばめ…)。グアテマラに関わり、パレスチナに関わり、これらの地で生きる人間たちに心を寄せ、彼らの生のありようを日本の市民に告げ報せたいというプロデューサー、安藤栄里子の熱い思いと彼女自身の生き方が込められた名前です。
メンバーの変遷
「国境なき朗読者たち」の初演は2009年9月11日、京都市左京区にあるカフェ「かぜのね」のフリースペースでした。50人の観客を前に、杏さだ子、片岡大輔、稲荷明子、井上浩孝、きむくんみ、安藤栄里子の6名が熱演しました(そのとき、舞台をご覧になった神戸の劇団「どろ」の演出家、合田幸平さんが、その場で劇団「どろ」による上演をお申し出くださり、同年12月、神戸のアートスペースで、「どろ」の団員さん、そして神戸市民の方々によって、この朗読劇が上演されました)。
翌2010年、イラク研究者の酒井啓子さんが主宰する「中東カフェ」から、広島で開催する中東カフェで朗読劇上演の依頼があり、3月21日、広島市内のカフェ・パコで半年ぶりに再演しました。新たに古澤亨と、ニューヨークに移住した きむくんみに代わり浅井桐子が加わり、キャスト7名で臨みました。このときから、ピアニスト田村喜久子作曲・演奏の間奏曲(録音)も入るようになりました。
2011年5月、京都大学を会場に開催される日本中東学会の年次大会の全体企画で本朗読劇が上演されることになりました。広島公演から1年ぶりの再演です。主役の一人、レイチェル・コリー役はそれまでの稲荷明古に代わり、新たに加わった山本久子が演じ、また、京都大学でアラビア語を学ぶ総合人間学部3回生、佐藤愛と、法学部3回生、大内雅子が新メンバーとして参加。160名の観客を前に9名が熱演、会場は涙と感動で包まれました。
2011年12月、京都市国際交流会館の東日本大震災被災地支援のためのチャリティー企画に参加し、劇団初の2日連続3回公演に挑戦しました。浅井桐子に代わり梶原玲子が、古澤亨に代わり桐生隆文がガザ通信アンサンブルに参加。収益金24万円は、被災地の市民団体に寄付いたしました。公演は、NHK国際放送(アラビア語)で2週にわたって紹介され、アラブ世界からも反響がありました。
2012年8月には、京都市左京区のタコス・レストラン「タケリア パチャンガ」で「8月 命を想う朗読会」を開催、杏さだ子、古澤亨、梶原玲子、山本久子、岡真理の5名が、日本や韓国、イラクの詩や散文を朗読しました。
2013年、ガザ攻撃から5年目となる12月、東中野のポレポレ坐を会場に、初の東京公演を行うことになりました。2年ぶりの再演です。ロンドン留学中の井上浩孝、卒業して巣立っていった大内雅子に代わり、新たに京都大学総合人間学部3回生の市川森彦、同2回生の井上緑、関口一騎が加わり、また、桐生隆文に代わり古澤亨が2年半ぶりに復帰し、杏さだ子が初演以来、務めてきたガザ通信アンサンブルのリーディングロールという重責を担いました。主役の一人、「ガザからの手紙」の主人公は、初演以来変わらず、片岡大輔が演じました。さらに東京公演では、ピアニスト田村喜久子が出演、間奏曲をピアノ生演奏で披露しました。
2014年2月、東京公演の余勢を駆って、東京公演と同じメンバーで、京都YWCAを会場に、2年ぶりに京都で再演、2009年9月のかぜのね公演以来、4年数か月のあいだに、進化を遂げた舞台を披露しました。